店に置いてあるハースストーンの薪ストーブを、はじめて触ったお客様は、たいてい同じことを言われます。「これ、石なんですか」。そうです、石です。ソープストーンという、少し不思議な名前の石。ハースストーンの薪ストーブが「陽だまりのような暖かさ」とたとえられる秘密は、ぜんぶ、この石の中にあります。今日は、素材そのものの物語をさせてください。
石けんの石、と呼ばれて
ソープストーンを直訳すると、「石けんの石」。名前の由来は、その手ざわりです。撫でてみると、石なのに、どこかしっとりと、なめらか。石けんに触れているような感触があるので、この名がつきました。主成分は滑石(タルク)を含む岩石で、彫刻や調理器具の素材として、世界中で古くから使われてきました。フィンランドやブラジルなどが産地として知られ、北欧では暖炉の素材として、長い歴史を持っています。つまり、火のそばで使われるために生まれてきたような石なのです。
熱を、ゆっくり蓄えて、ゆっくり返す
ソープストーンの最大の特徴は、その蓄熱性です。鉄と比べて、熱をため込む力が高く、そして手放すのが、とてもゆっくり。薪ストーブの素材としては、これが決定的な違いを生みます。
鋳物の薪ストーブは、焚けば早く暖まり、火が落ちれば、それなりに早く冷めていきます。ソープストーンのストーブは、逆です。焚きはじめは、石が熱を吸い込むので、立ち上がりはおっとりしています。ところが、一度あたたまった石は、火が消えたあとも、何時間も熱を放ち続ける。夜十時に最後の薪を入れて眠れば、朝方まで、ストーブはほんのりあたたかいまま。夜通し家をあたためる「熾火と石の二段構え」ができるのは、この石ならではです。(朝の熾火の話は、冬の朝の話に書きました。)
やわらかい熱の、正体
ソープストーンの熱は、よく「やわらかい」と表現されます。感覚の話のようですが、理由があります。石の表面温度は、鋳物の天板ほどカッと上がらず、そのぶん、じんわりとした遠赤外線の輻射が長く続く。焚いている最中に近づいても、頬に刺さるような熱さではなく、日なたに立ったときのような、包まれる暖かさなのです。だから、子どもやペットのいる家にも向いています。(輻射の話はこちら、ペットの話はこちらに。)
そして、サウナ好きの方なら、もうお気づきだと思います。サウナストーンが生む、あのまろやかなロウリュの熱と、同じ理屈です。石の蓄熱は、熱をやさしくする。フィンランドのサウナと、ハースストーンの薪ストーブは、「石に火の熱を預けて、やわらかくしてから受け取る」という、同じ知恵の上に立っています。(サウナストーンの話は、こちら。)
百年ものの家具のように
ソープストーンのストーブは、見た目にも、石ならではの魅力があります。一台ごとに違う、天然石の縞模様。使い込むほどに、色つやが深まっていく経年変化。鉄の無骨さとはまた違う、家具のような佇まいです。ハースストーン社は、アメリカ・バーモント州で、この石のストーブをつくり続けてきた老舗。頑丈なつくりで、部品を替えながら何十年も使い続けられます。ストーブというより、家に一枚、あたたかい岩を据えるようなもの。長い付き合いになる買い物です。
石の暖かさを、確かめに
ソープストーンの良さは、文章では、半分も伝わりません。撫でて、火が入っているところを見て、火が落ちたあとの残り火のぬくもりに触れて、はじめてわかるものです。岩手・盛岡のD'STYLEの店には、ハースストーンの実物があります。岩手の長い冬にこそ、この石の蓄熱は本領を発揮します。設置のご相談も、おすすめの機種選びも、どうぞお気軽に。ぜひ一度、石を撫でにいらしてください。



