前回、ソープストーンという石の話を書きました。今日はその相棒、というより、薪ストーブの歴史をずっと背負ってきた本流の素材。鋳物(いもの)の話をさせてください。バーモントキャスティングスの、あの美しい姿を思い浮かべながら読んでいただけたら、うれしいです。
鋳物とは、何か
鋳物とは、どろどろに溶かした鉄を、砂の型に流し込んでつくる金属のことです。日本なら南部鉄器、あの世界です。実は盛岡に暮らす私たちには、鋳物はとてもなじみ深い素材。あの鉄瓶のずっしりとした質感と、表面の細やかな模様を、そのまま暖炉の大きさにしたものが、鋳物の薪ストーブだと思ってください。
型に流してつくるからこそ、鋳物には、板金では出せない造形ができます。曲面、彫刻のような紋様、脚の優美な曲線。バーモントキャスティングスのストーブが、火を入れていないときでさえ美術品のように見えるのは、この鋳物の造形力のおかげです。
厚い鉄は、熱を丸くする
鋳物の薪ストーブの壁は、厚みのある鉄でできています。この厚みが、熱の性格を変えます。薪の炎は、燃え方に波があるもの。強く燃え上がる時間もあれば、静かな時間もある。薄い鉄板なら、その波がそのまま部屋に伝わりますが、厚い鋳物は、いったん熱を自分の体に蓄えてから、ならして放つ。炎の波を、鉄の厚みが受け止めて、丸くしてくれるのです。だから鋳物の熱は、とがらない。じんわりと、やわらかい。ソープストーンほどの長い蓄熱ではないけれど、立ち上がりの早さと、熱のやわらかさの、ちょうどいい真ん中にいる素材です。(熱の伝わり方の基本は、輻射式と対流式の話に。)
バーモントキャスティングスという名門
鋳物の薪ストーブの世界で、バーモントキャスティングスは特別な名前です。1970年代にアメリカ・バーモント州で生まれ、名機アンコール、デファイアントを世に送り出してきました。社名がそのまま「バーモントの鋳物」。鋳物への誇りを社名にした会社です。
特徴は、なんといっても、トップローディング(天板から薪を入れられる仕組み)や、料理までできる火力調整といった、暮らしの道具としての完成度。そして、あの気品のある佇まいです。クラシックな鋳物の紋様は、和室にも洋室にも、古民家にも新築にも、不思議なほどなじみます。半世紀にわたって世界中で愛され続けているのは、性能と美しさの両方が、時代を超えているからです。(アンコールの設置事例は、施工事例でご覧いただけます。)
直して、育てて、何十年
鋳物のストーブには、もうひとつ、大きな美点があります。直せることです。鋳物のストーブは、部品の集合体。ガスケットを替え、傷んだ部品を交換しながら、何十年も使い続けられます。実際、当店には、二十年ものの機体のメンテナンスのご依頼が、今もたくさん届きます。手をかけた道具が、家族の歴史と一緒に年を重ねていく。鋳物のストーブは、買い替えるものではなく、育てるものです。(修理か買い替えかの見極めは、こちらに。)
石と鉄、どちらを選ぶ?
ソープストーンの、朝まで続く蓄熱。鋳物の、立ち上がりと造形美。どちらが上ということはなく、暮らし方で選ぶものです。一日じゅう家にいて、家全体をゆっくり暖めたいならソープストーンのハースストーン。夕方帰宅して、早く部屋を暖めたい、料理も楽しみたいなら鋳物のバーモントキャスティングス。ざっくり言えば、そんな目安です。岩手・盛岡のD'STYLEの店には、どちらの実物もあります。撫で比べて、眺め比べて、あなたの暮らしに合うおすすめの一台を、一緒に見つけましょう。設置のご相談、いつでもお待ちしています。



