夏の薪ストーブは、部屋の隅で静かにしています。火のないストーブは、どこか手持ちぶさたで、少し寂しげにも見える。でも、薪ストーブの上手な乗り手たちは知っています。夏は、ストーブの休暇ではなく、次の冬の仕込みの季節だということを。冬の快適さは、夏の過ごし方でほとんど決まります。今日は、火のない季節の、豊かな過ごし方の話です。
煙突掃除は、夏が正解
まず、いちばん大事な夏仕事が、煙突掃除です。ひと冬働いた煙突の内壁には、煤やタールがびっしり積もっています。これを落とすのは、シーズン直前の秋ではなく、夏のうちが正解。理由は二つあります。一つは、秋になると掃除の依頼が一気に集中して、予約が取りにくくなること。もう一つは、梅雨から夏の湿気が、放っておいたタールに染み込み、酸になって煙突を内側から傷めやすいこと。夏のうちに煤を落とせば、金属もれんがも長持ちします。当店でも、八月末までの掃除をおすすめしています(詳しくは煙突掃除の時期の話に)。夏に済ませた人だけが、秋一番の冷え込みの夜に、何の心配もなく火を入れられます。
薪は、夏の日差しで育つ
そして、薪です。春に割った薪は、夏の日差しと風で、ぐんぐん乾いていきます。木は含水率が二十パーセントを切って、ようやく薪として一人前。そこまで乾かすには、割ってから最低でも一夏、堅い広葉樹なら二夏かかります。「薪は二夏越させろ」という言い伝えは、伊達ではありません。夏のあいだに薪棚の風通しを見直し、雨の当たる列にはトタンをかけ、来年用の原木の当てをつけておく。汗をかく薪仕事は、それ自体が夏のいい運動で、そのあとの水シャワーが、またうまい。夏をどう使うかが、冬の炎の質を決めるのです。(薪の乾燥の話は、こちら。)
火のないストーブの、飾り方
掃除を終えた夏のストーブは、部屋の主役の座を、静かに守っています。天板に季節の花を一輪。炉のなかに背の高いキャンドルを何本か並べて灯せば、夏の夜のやわらかな間接照明になります。欧米では、オフシーズンの暖炉にキャンドルを飾るのは昔からの定番で、火のない炉ばたを楽しむ知恵です。黒々と鎮座するストーブは、「もうすぐ火の季節が来る」という、ひそかな予告の置き物。夏のあいだも、ストーブは家の風景の中心にいられます。火の入っていない黒い鋳肌は、火のある冬と同じくらい絵になります。手が空いたら、この時期に鋳物用のストーブポリッシュで天板を軽く磨いておくと、錆を防ぎ、艶やかな肌のまま次の冬を迎えられます。
秋一番の火入れという、ごほうび
そして、夏仕込みの最大のごほうびが、秋の初火入れです。朝晩が冷え始めた十月のある夜、今シーズン最初のマッチを擦る。掃除の済んだ煙突は引きがよく、よく乾いた薪は素直に燃え上がる。ひと夏ぶりの薪の香りが部屋に満ちた瞬間の、あのうれしさ。これは、夏にちゃんと仕込んだ人だけがもらえる、特別な夜です。サウナも同じで、夏のあいだに点検やサウナストーンの積み替えを済ませておけば、外気浴が気持ちよくなる秋から、全力で楽しめます。夏に流した汗と手間は、そっくりそのまま、秋冬の喜びに変わります。
夏のうちに、ご相談を
岩手・盛岡のD'STYLEは、煙突掃除、薪の手配、ストーブの点検まで、夏の仕込みをまるごとお手伝いしています。そして、新しく薪ストーブやサウナをお考えの方も、実は夏が動きどきです。秋冬は工事が混み合うため、夏のご相談なら、初雪の前にゆとりをもって設置が間に合います。次の冬を、いちばんいい状態で迎えましょう。ご相談、いつでもどうぞ。



