薪ストーブというと、北欧やアメリカの暮らしを思い浮かべる方が多いと思います。輸入の文化、洋風の趣味だと。でも、私たちはこの仕事をしながら、いつも逆のことを感じています。薪ストーブに惹かれる日本人が、こんなに多いのは、これが「新しい外国のもの」だからではなく、「懐かしい日本のもの」だからではないか、と。今日は、日本の家にあった火の記憶の話です。
火が、家の真ん中にあった
つい数十年前まで、日本の家の真ん中には、火がありました。囲炉裏です。土間には竈があり、部屋には火鉢があり、囲炉裏の上には鍋が吊るされ、灰の中では餅や芋が焼けていた。家族は自然と火の周りに集まり、客人は囲炉裏端のいちばんいい席に通された。火は、暖房であり、台所であり、照明であり、家族の集会所であり、家の神様のいる場所でもありました。
ここ岩手なら、その記憶はもっと濃いはずです。曲り家の囲炉裏、南部鉄器の鉄瓶がしゅんしゅんと湯気を上げる音。おじいちゃん、おばあちゃんの家の匂いとして、囲炉裏や薪の風呂を覚えている方も、まだたくさんいらっしゃいます。
火のない家に、なった
戦後、暮らしは一変します。竈は炊飯器に、囲炉裏は石油ストーブに、そしてエアコンに。便利で、安全で、手間いらず。その恩恵は計り知れません。でも、家から「見える火」が消えたとき、一緒に消えたものもありました。家族が自然と一か所に集まる理由。火の世話という、子どもの仕事。ゆらめく炎を囲む、あの時間の流れ方。今の家で家族が集まる場所は、テレビの前からスマホの中へと、ばらばらになっていきました。
薪ストーブは、現代の囲炉裏
薪ストーブは、この失われた囲炉裏の役割を、現代の家に取り戻す道具だと、私たちは考えています。家をあたためる火。天板で煮炊きのできる火。家族が吸い寄せられる火。客人に「まあ、火のそばへ」と言える家。囲炉裏と違って、煙は密閉された炉と煙突がきちんと外へ運び、気密の高い現代住宅にも安全に納まります。昔の火の良さだけを、現代の技術で受け継いだかたちです。
実際、古民家に薪ストーブを入れたいというご相談は、年々増えています。囲炉裏のあった家に、現代の火を戻す。太い梁の下に鋳物のストーブが据わった景色は、驚くほどしっくりきます。バーモントキャスティングスのクラシックな佇まいも、ハースストーンの石の質感も、日本の古い家と、実によく合うのです。(鋳物の話はこちら、石の話はこちら。)
サウナと風呂の関係も、同じ
ついでに言えば、サウナも同じです。日本には、蒸し風呂や薪の風呂という「汗と蒸気の文化」が、もともとありました。フィンランドのサウナが日本人にこれほど愛されるのは、遠い国の珍しい風習だからではなく、私たちの体が覚えている風呂の記憶と、地続きだからだと思います。囲炉裏が薪ストーブに、蒸し風呂がサウナに。外国の文化を輸入しているようで、実は、自分たちの火の記憶を取り戻している。私たちの商売は、そういう仕事なのだと思っています。(お風呂とサウナの話は、こちら。)
あなたの家に、火の居場所を
岩手・盛岡のD'STYLEは、新築にも、古民家にも、薪ストーブとサウナの設置をお手伝いしています。おじいちゃんの家の囲炉裏が恋しい方も、囲炉裏を知らない世代の方も。火が家の真ん中にある暮らしの心地よさは、体がちゃんと覚えています。おすすめの一台のご相談、いつでもどうぞ。現代の囲炉裏端で、お待ちしています。



