サウナが好き過ぎて、フィンランドへ渡りました。HARVIA本社をたずね、現地のサウナ施設の仲間や施工の同業者に会い、フィンランド各地を施設から施設へ、毎日何施設もはしごしてきました。もはや北欧サウナ研究会です。自称ですけど(笑)。ととのいが、氷点下20℃の外気を浴びながらの移動中にやってきたこともありました。今日は、そこで体に刻んできたものの話です。
凍った海に、何度も入りました
ヘルシンキの海辺にLöyly(ロウリュ)という有名なサウナがあります。冬、目の前の海は凍っています。サウナで温まった人たちが、氷に開けた穴に次々と入っていく。アヴァント(avanto)といいます。
私も入りました。それも一度ではなく、いろんな施設の海や湖に、何度も何度も飛び込みました。外気温は昼間でも氷点下17℃。入った瞬間、全身に針を刺されるような冷たさです。正直、正気の沙汰じゃありません。
でも、上がってからのあの感じ。体の内側から湯気が立って、頭がすっと静かになる。そして世界が、やけに鮮やかに見えるんです。これは入った人にしかわからない。うまく説明はできないけれど、私は何度もそれを味わってきました。
忘れられないのは、Löylyへ向かう道すがら見かけたおじいちゃんです。サウナ上がりですらなく、散歩のついでに、ひょいと氷の海へ入っていきました。あの国では、それがふつうの光景でした。
サウナって、熱い部屋のことじゃない。
温めて、冷まして、休む。その一連の時間のことなんだと思います。
ハルビアが設計した施設で、答え合わせをした
滞在中、本国ハルビア社が設計した施設にも入りました。うちはハルビアの岩手県正規施工販売代理店ですから、これは仕事の答え合わせでもあります。
座面の高さ、湿度、ヒーターとの距離。その兼ね合いが、見事に決まっていました。熱いのに、やわらかい。長く座っていられるのに、ちゃんと汗が出る。いいサウナ室は、やっぱり設計なんです。まぐれじゃない。それを本家のつくりで確かめられたのは、大きな収穫でした。
本当の学びは、現地の人がくれた
今回の旅で、いちばんの財産になったもの。それは施設でも資料でもなく、現地の人とつながれたことでした。ユバスキュラでは、その土地のサウナづくりを引っ張る仲間たちが迎えてくれて、本当にたくさんのことを教わりました。本場で第一線に立つ人が、惜しみなく手の内を見せてくれる。汗をかいて、水風呂で震えて、火の前で——酒も飲まずに語り合いました。こんな贅沢な学びは、そうそうありません。
サウナ室の設計、ヒーター選定の考え方、ベンチとヒーターの位置関係、断熱と遮熱の使い分け、遠赤外線とサウナストーンの関係。そして「設計と実践は違う」という、現場に立ち続けた人間の口からしか出てこない話。本やカタログをいくら読んでも、たどり着けないところでした。それを現地の人が、直に、手取り足取り教えてくれたんです。
日本で常識とされているサウナ室のつくり方を、根底から覆される発見がいくつもありました。本場で受け取ったこの学びを、うちがこれから岩手でつくるサウナ室に、ぜんぶ落とし込んでいきます。
岩手は、フィンランドに似ている
帰りの飛行機で考えていたのは、岩手のことでした。長い冬、雪、静かな森、豊富な木材。環境だけなら、岩手はフィンランドにかなり似ています。真冬の外気浴なら、むしろ本場級のものが庭先にある。足りないのは、暮らしの中のサウナだけ。
それなら、つくればいい。本場で体に刻んだつくり方で、岩手の木も使いながら、この土地にサウナの文化を根付かせたい。うちのショールームには本物のサウナがあります。まず蒸気を浴びに来てください。氷の海の話の続きは、火の前でしましょう。



