想像してみてください。二月の岩手、夜の九時。突然、家じゅうの明かりが消える。エアコンが止まり、ファンヒーターが沈黙し、部屋の温度が、一度、また一度と下がりはじめる。外は氷点下。停電の情報を調べても、復旧は「未定」。そのとき、あなたの家は、朝まで暖かいままでいられるでしょうか。
薪ストーブのある家は、この夜が、まるで違うものになります。今日は、暖房としてだけではない、「防災設備」としての薪ストーブの話をさせてください。
電気がなくても、燃え続ける
薪ストーブの強さは、その仕組みの単純さにあります。薪を入れ、火をつけ、空気の量を調節する。それだけ。電気も、ガスも、灯油も、一切いりません。だから、停電しても、いつもと何ひとつ変わらずに燃え続けます。エアコンも、ファンヒーターも、床暖房も、現代の暖房のほとんどは、電気が止まればただの箱です。真冬の停電で本当に怖いのは、暗さではなく、寒さ。薪ストーブは、その寒さに対する、いちばん確かな備えです。
暖房だけでは、ありません
停電の夜、薪ストーブにできることは、家を暖めるだけではありません。天板にやかんをのせれば、湯が沸く。温かいお茶が飲めて、湯たんぽがつくれる。鍋をのせれば、ごはんも炊けるし、味噌汁も、煮込みもつくれる。炉の中の熾火では、パンだって焼けます。つまり、電気が止まった家の中で、薪ストーブ一台が、暖房と、給湯と、台所の役割を、まとめて引き受けてくれるのです。ゆらめく炎は、照明がわりの明かりにもなり、何より、不安な夜の心を、静かに落ち着かせてくれます。(薪ストーブ料理の楽しみは、こちらに詳しく。)
薪の備蓄は、そのまま防災備蓄
薪ストーブの暮らしでは、庭先の薪棚に、ひと冬分の薪を積んでおくのが当たり前です。これは、見方を変えれば、燃料の備蓄が常に家にあるということ。ガソリンスタンドに列ができても、灯油の配達が止まっても、関係ありません。エネルギーの自給自足に、いちばん近い暖房。それが薪ストーブです。しかも薪は、何年置いても劣化して使えなくなるものではなく、むしろ乾いて良い薪になっていく。こんな備蓄が、ほかにあるでしょうか。(いい薪の話は、三代目の薪屋の話をどうぞ。)
ペレットストーブの場合は
ここは、正直にお話しします。同じ木の燃料でも、ペレットストーブの多くは、燃料の供給や送風に電気を使うため、停電するとそのままでは動きません。日々の使いやすさ、燃料の扱いやすさでは、ペレットストーブに大きな利点があります。ただ「停電への強さ」という一点では、電気のいらない薪ストーブに軍配が上がります。当店では両方を扱っているからこそ、暮らし方に合わせて、正直にご提案しています。迷ったら、どうぞ率直にご相談ください。
あの日、頼りになったもの
岩手に暮らす私たちは、大きな地震も、大雪の停電も、経験してきました。そのたびに、薪ストーブのお客様から聞くのは、同じ言葉です。「うちは、いつもどおりだったよ」。家族が一部屋に集まって、ストーブの火で餅を焼いて、いつもより静かな夜を過ごした。停電が復旧したとき、少しだけ名残惜しかった、と笑った方もいました。備えというのは、本当は、こういう形がいちばんいいのだと思います。特別な防災グッズではなく、毎日使って、毎日楽しくて、いざという時には家族を守ってくれるもの。
岩手の冬の、お守りとして
薪ストーブは、暖房であり、台所であり、家族の集まる場所であり、そして、いざという夜の、いちばん頼れるお守りです。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハースストーンやバーモントキャスティングスをはじめ、岩手の冬に負けない薪ストーブの設置を、煙突の計画から薪の手配まで、まるごとお手伝いしています。防災の視点からの機種選びのご相談も、おすすめの一台のご提案も、どうぞお気軽に。次の冬が来る前に、一度、話を聞きにいらしてください。
写真: Vyacheslav Argenberg (Wikimedia Commons, CC BY 4.0)



