サウナづくりのご相談で、いちばん多い質問のひとつが「どの木がいいんですか?」です。ヒノキ、ヒバ、杉、フィンランドの木。たしかに樹種選びは楽しいですし、大事です。ショールームでも、木の話になるとお客さまの目が変わるのが分かります。
でも、樹種を選ぶ前に決まる勝負があります。それが「乾き」。サウナ用の木材は、どれだけ水が抜けているかで、10年後の姿がまるで違ってきます。
私は岩手で親子三代、木とともに生きてきた薪屋の三代目です。今日は、うちがサウナの木材でいちばんこだわっている「乾燥」の話を聞かせてください。
サウナ室の木は、「乾き」が命です
90℃を超える熱と、ロウリュの蒸気。サウナ室は、家のどの部屋よりも木に厳しい場所です。ところが、伐り出したばかりの木は、たっぷりと水を抱いています。その水を抜ききらないままサウナに入れると、木は暴れるんです。反り、割れ、板と板の隙間。湿気が残ればカビの心配も出てくる。数年で寿命が来てしまいます。
逆に、水を抜ききった木は、熱と蒸気を何度浴びても寸法が動きません。反らないし、割れない。板と板の隙間も、空いてこない。ヤニも噴かず、香りが澄みます。同じ木でも、乾きひとつでこれだけ変わるんです。
普通の建材の乾燥では、届かない
「木材の乾燥なんて、建材ならどこでもやってるでしょう」。ええ、やってはいます。ただ、住宅用の乾燥とサウナ用の乾燥では、求めるレベルがまるで違うんです。
うちが目指すのは「全乾(ぜんかん)」。木の芯に残る水分まで抜けきった、限界まで乾いた状態です。天然乾燥や、ふつうの人工乾燥では、ここまでは届きません。半年、一年と屋根の下で寝かせても、木は最後の水をなかなか手放してくれないんです。だから、温度と時間を管理しながら、じわじわ抜いていく。焦って急ぐと割れるので、こっちも急がない。木が落ち着くまで、とことん付き合います。
ちなみに本場フィンランドには、木の芯まで熱を入れて寸法を安定させる「サーモウッド(熱処理木材)」という材もあります。やり方はうちと違いますが、やろうとしていることは同じ。結局、サウナの木は、水としつこく向き合ったものが長く保つんです。
水さえ抜ききってしまえば、
木は、岩手の10年の熱にも耐えてくれます。
それでも、岩手の木を使いたい
実を言えば、サウナ用に実績のある輸入材や、特殊加工を施した吉野桧を仕入れるほうが、手間は少ないんです。うちでもそうした材はきちんと扱っていますし、適材適所で使い分けます。いい材は、いい。
それでも私は、岩手の木でサウナをつくりたいんです。祖父は住田町の山主で、樺太で林業をしていた人でした。父が継ぎ、私で三代目。子どもの頃から、木は「材料」というより、暮らしの相棒みたいなものでした。地元の森の木で、地元の人の暮らしをあたためる。まあ、そこにだけは嘘をつきたくないんです。
岩手には、いい木があります。香りのいい岩手ヒノキ、水に強い岩手ヒバ、壁や天井をやわらかく包む岩手杉。壁には杉、濡れる場所にはヒバ、といった具合に、その場所に合う木を割り付けていく。あとはここに、水を抜ききる執念さえ加われば、岩手の木も、ちゃんとサウナの木になります。
KUUTAという、うちの答え
そうして生まれたのが、自社サウナブランド「KUUTA(クータ)」です。岩手の木を選び、全乾まで乾かし込み、一台ずつ仕上げる。地味な話です。いちばん時間をかけているのは、お客さまの目に見えない乾燥の工程ですから。
三代、火と木で生きてきた家です。ここで手を抜いたら、さすがに顔向けできません。KUUTAの強さがあるとすれば、たぶん、この地味な工程のところなんです。
乾いた木の香りは、来て確かめてください
ここまで読んで「そんなに違うものかな」と思った方も、いるかもしれません。それはそうですよね。乾いた木の、あの澄んだ香りだけは、どうやっても文章では届けられないので。
盛岡・国道4号線沿いのショールームには、本物のサウナと、火の入った薪ストーブがあります。ご来店は予約不要。木の話を聞きたいだけでも大歓迎です。ただ、三代目の木の話はちょっと長いので、お時間には余裕を持ってお越しください笑



