今年最後の東京出張でした。昼は商談と打ち合わせ。日が暮れて仕事が終わると、私にはもうひとつの予定が待っています。サウナ施設の調査です。滞在中の行き先は、「毎日サウナ 東京」の幕張店。今回は千葉県まで足を伸ばしました。
サウナ好きには、たまらない時間です。だから出張の夜は、タオルを持って街へ出かけるのです。

岩手では、ありえない人数
まず驚いたのは、人の多さです。それも、いかにも歴戦のサウナーばかりではなく、仕事帰りの若い人、友だち同士、はじめて来た様子の方。ライトな来店者がとても多い。岩手ではありえない人数が、当たり前の顔でサウナに並んでいました。
サウナが特別な趣味ではなく、日常の風景になっている。この広がりが、いま東京で起きていることなんだと思います。そしてこの波は、たぶん岩手にも来ます。外気浴の空気のうまさなら、こっちが上ですけどね。受け皿だけ、先に作っておきます。
キンキンに尖った、8.4℃の水風呂
最初に入った水風呂は、8.4℃でした。キンキンに尖った冷たさです。サウナ好きの間では、水温が一桁の水風呂を「シングル」と呼びます。肩まで沈んだ瞬間、皮膚がきゅっと目を覚まし、呼吸が一段浅くなる。ほんの数十秒で、体の芯まで冷えが届きます。
この一杯から始まった夜ですから、身体は暖まる気配もありません。お陰で何度もサウナ室に入り、ロウリュをして貰い、熱波を頂いてきました。冷え切った体で受ける蒸気の熱は、格別です。仕事を忘れて、と言いたいところですが、頭の半分はずっと仕事をしていました。この水温を保つ設備は、この蒸気を送るヒーターは、と考え始めると止まりません。
6分の熱波が1時間に1回。オートロウリュは30分に1回
同じ施設でも、部屋ごとに営業の組み立てがはっきり違いました。ある部屋は、6分ほどの熱波セッションを1時間に1回。スタッフがタオルで蒸気をあおぎ、熱の波を客席まで届けます。別の部屋は、オートロウリュを30分に1回。機械が定刻に石へ水を落とし、部屋の湿度が静かに立ち上がります。
作り手の目で見ると、この「間隔」こそが設計です。蒸気を送るリズムは、サウナ室の温度と湿度の波を作り、お客さんの滞在時間を決め、水風呂と休憩スペースの混み方まで変えていきます。そしてそのリズムを支えるのは、ヒーターの能力、石の量、換気の計画です。1時間に1回の熱波には1時間で熱を取り戻せるヒーターが、30分に1回のオートロウリュには連続投入に耐える石とストーンの容量が要ります。営業の個性は、機械室の設計から生まれています。
ロウリュの間隔も、水風呂の温度も、
結局は設計の話なんだよな、と思う。
お風呂が、テーマパークだった
その夜、いちばん感動したのは、お風呂でした。ひとことで言えば、ディズニーランド(笑)。光と音と熱の演出が切り替わり、景色が変わる。気づけば時間を忘れて、30分ほど、そのお風呂にいました。とはいえ、もう朝の4時。薪サウナの薪も、そろそろ入れてもらえなくなる時間で——お風呂もしっかり楽しんできた、という話です。
そして職業柄、つい裏側を見てしまいます。100℃近い熱と蒸気の中で、照明を安全に灯し続ける技術。濡らさないためのスピーカーの置き場所。人がぶつからない室内の動線。派手に見える部屋ほど、足元の設計は地味で泥くさいものです。熱い部屋の明かりについては、サウナ照明のページで詳しくお話ししています。

本当のお目当ては、薪サウナ
今回の遠征も、薪サウナに入りたくて行ってきたようなものです。薪の熱で焚かれるサウナ室だけは、どうしてもこの身体で確かめておきたい。いま人気のサウナ室が、どんなものなのか。それを知るためでもありました。
その薪サウナ室は二段づくりで、さらにその上に、特別な席がふたつ。この二席のために作られたような、巨大なサウナ室でした。つまり、そこに座らなければ薪の本当の良さは味わえない。もちろん、座ってきました。
湿度をたっぷり含んだ熱波が、体を包み込みます。電気の熱とは、質感がまるで違う。薪独特の熱さです。炎が石を焼いて、その石が蒸気を返してくる。薪ストーブの前で毎日感じている「火の柔らかさ」と、鉄板のような重い熱波が、そのままサウナ室の熱になっていました。そして——うちが提案しているサウナヒーターと、じっくり比べさせてもらいました。
この薪の熱は、岩手でも作れます。電源のいらない薪式ヒーターの話は、薪サウナストーブのページにまとめました。
締めは、朝5時
深夜0時を過ぎると、あれだけいた人がすっと引いていきます。そこからが私の時間です。空いたサウナ室で、朝5時までたっぷり、気持ちよく入ってきました。
私の流儀は「サウナ室は、みんなが入らない時間に入る」。施設のサウナヒーターの修理を、皆さんが入り終えたあとの時間にやるのと同じ感覚です。誰もいない時間なら、部屋の熱をひとり占めしてゆっくり堪能できるし、手すきになったスタッフさんともたくさん話せます。営業の裏話、ヒーターの癖、掃除の段取り。こういう立ち話が、実はいちばん役に立ったりします。めちゃめちゃ気持ちよかったです。
まだまだ、行き足りない
一晩、部屋から部屋へと移るだけでも、発見だらけです。脱衣所からサウナ室までの歩数。水風呂の縁の高さ。休憩椅子の向きと間隔。ロウリュの水に混ぜる香り。どの部屋も、趣向を変えて、それぞれの答えを出していました。まだまだ行き足りないですね、というのが正直な感想です。
この旅の学びは、全部岩手へ持ち帰ります。8.4℃の尖った冷たさも、6分の熱波の組み立ても、30分に1回のオートロウリュも、特別席で浴びた薪の熱も。次に誰かのサウナを設計するとき、その引き出しを開ければいい。東京で浴びた熱は、たぶん盛岡の図面の上でもう一度役に立ちます。
東京で学び、岩手で作る
宿泊施設や店舗にサウナを、と考えている方は、施設・法人向けサウナのページをご覧ください。ロウリュの間隔から逆算したヒーター選び、水風呂と休憩の動線計画まで、施設巡りで磨いた目で一緒に組み立てます。
自宅にあの心地よさを、という方には室内・自宅サウナと屋外サウナを。施設で覚えた「好きな熱」を伝えてもらえれば、それを自宅サイズに翻訳するのが私たちの仕事です。盛岡・国道4号線沿いのショールームでは、実際にロウリュの蒸気を体験できます。ご相談は無料です。お電話は019-681-2477(9:00〜17:00、水曜定休)へどうぞ。


