フィンランドのサウナに入って、日本人がまず驚くことのひとつが、音楽が流れていないことだそうです。テレビもない。案内放送もない。あるのは、石の上で水がジュッと弾ける音と、木の壁がかすかにきしむ音、そして、隣に座る人の静かな呼吸だけ。最初は物足りなく感じて、五分もすると、気づくのです。ああ、これがいちばん贅沢なのか、と。今日は、サウナと「静けさ」の話をさせてください。
耳は、休みなく働いている
目は、まぶたを閉じれば休めます。でも耳には、まぶたがありません。街の騒音、職場の話し声、スマホの通知音、家に帰ればテレビの音。私たちの耳は、朝起きてから眠るまで、休みなく働き続けています。音の洪水の中で暮らしていることに、私たちはあまりに慣れてしまって、疲れていることにすら、気づいていません。
静かなサウナに入ると、その耳が、ようやく解放されます。最初のうちは、頭の中がまだ騒がしい。でも、じっと座っているうちに、耳が拾う音が、少しずつ変わっていきます。ロウリュの蒸気の音。自分の心臓の音。汗が、ぽたりと床に落ちる音。ふだんは聞こえない小さな音が聞こえはじめたら、それは、心が静まってきた合図です。(この先にあるのが、ととのうという時間です。)
沈黙を、分かち合う文化
フィンランドの人たちは、沈黙を気まずいものと考えません。むしろ、信頼している相手とは、黙って一緒にいられる、と考えます。サウナは、その文化がいちばん濃く表れる場所です。家族や友人と並んで座って、何も話さない。ときどき、誰かがぽつりと一言いって、また静かになる。その沈黙は、冷たいものではなく、焚き火を一緒に囲んでいるときのような、あたたかい沈黙です。
おもしろいことに、サウナの静けさの中でこそ、本当の話が出てくるものです。会議室では出ない本音が、裸で並んだ薄暗がりでは、するりと出てくる。フィンランドでは大事な話をサウナでする、と昔から言われるのは、このためでしょう。
ロウリュは、耳でも味わえる
静かなサウナでは、ロウリュが、音の主役になります。ひしゃくの水が石に触れる、あの「ジュワッ」という音。あれは、聞けば聞くほど味わい深いものです。石がよく熱されているときの、切れのいい弾け方。水の量による、音の長さの違い。ハルビアのヒーターにたっぷり積んだサウナストーンなら、音まで力強く、豊かになります。目を閉じて、音だけでロウリュを味わう。蒸気が天井を這って、背中に降りてくるまでの数秒間を、耳で追いかける。これは、静かなサウナでしか楽しめない遊びです。(石の話は、こちらに。)
音楽も、ときには
誤解のないように言うと、サウナで音楽を楽しむのが悪いわけでは、まったくありません。好きな音楽を小さくかけて汗を流す時間も、素敵なものです。大事なのは、選べること。今日は音楽と一緒に、今日は何もなしで。施設では選べないこの自由が、自宅サウナには、あります。そして一度「無音のサウナ」の深さを知ると、静けさを選ぶ日が、きっと増えていきます。
静けさを、家に持つ
考えてみれば、現代の家の中に、「完全に静かで、何もしなくていい部屋」は、ほとんど残っていません。自宅サウナは、家の中に静けさの部屋をひとつ持つ、ということでもあります。誰にも呼ばれず、何にも鳴らされず、ただ熱と一緒に座っている時間。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、その静かな部屋の設置をお手伝いしています。騒がしい毎日をお過ごしの方にこそ、おすすめします。耳を休ませる場所、つくりませんか。



